舞鶴公園の梅 ビューカメラって面白いよ


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櫻ばかりの投稿もどうかな、と思ひ、ちょいと前の梅を投稿してみることにした。舞鶴公園の梅である。この時はかなりの曇天で今にも雨が降りそうだったやうな記憶があるのだが、相手が難敵である梅であつたため、対抗するためにWISTAを持ち出すことにした。

一般に梅の撮影といふのは結構難しいと言われているのだが、特に難しいのが咲いている梅の木を長焦点距離で狙つた際である。大半の35mmフィルムだと、極めて濃い朱をまとった梅の花が汚く滲んだやうに表現されてしまい、更にNIKKORに代表されるカリカリ系のレンズだとザワザワしたような、見ていて何となく落ち着かない「ウザい」系の寫眞となってしまいがちである。

(もつと最悪なのが一眼デジカメ系で、フラグシップ機でも朱の表現が噓まみれのハイパー塗り絵状態である。が、まあ元々が「センサー感知式自動塗り繪器」なだけに面目躍如でもあらうが・・・)

これに對して大型のフィルムを使った場合、再現性に餘裕があるため滲みも多くなくザワザワした感じもなく、極めてごく普通に撮れてしまうところが利點である。なんだこのくらいうちのカメラでも撮れるよ、と思はれた方は實際に撮ってみると意外にも結果が意圖を反映してくれていない(どうもイマイチな感じになる)のに気づくことだらう。

フィルムカメラの利點はデジカメ玩具のやうにセンサーサイズに縛られない所である。撮影対象ごとにフィルムのサイズを変更して撮影できる點は何者にも代え難い長所として考えられるのである。このやうに腰を据えて緻密な撮影を行う際には、できるだけ大きいサイズのフィルムで、ビューカメラを用いて煽り等を用い厳密にピントを合はせるのが鉄則であらう。

この寫眞の場合は、高臺に登って三脚を立て、カメラを組み立て、蛇腹を延ばして250mmレンズをセットし、煽り・シフトを多少入れた上でスポットメーターで露出を計り、シャッターを閉めてチャージし、ブローニーのフィルムスライダーを突っ込んでから、遮光蓋を引いてようやくシャッターを切ったものである。

當然ながらシャッターを閉めた後はファインダーから像を覗くことはできないため、かなり強くファインダー像腦内に焼き付けておかないと、シャッターを閉める~シャッターを切る直前に人が通ったり強風が起きたりするわけで、撮ろうとしている所がどこなのか憶へておかないとシャッターを切るのを待つことすらできない。これは結構難しい。

一枚撮るのに、慣れてても3分はかかる。だいぶ慣れたので3分でできるやうになったが、通常は10分かかると云はれている。こんな面倒な事をやってでも得られる寫眞はそれ相當の満足感あるものである點が素晴らしい。まさに趣味冥利に盡きるといふものである。

この寫眞を撮った際には何も考えずに撮ったのであるが、改めて観ると背景に緑色がありつつの紅い梅が手前にあり、小型判では恐らく滲みまくって汚く写りがちなものである。フィルムサイズが大きくレンズにもギリギリ8×10まで行けるものを6×7で撮るといふ超餘裕かました状態であるので、特に問題なく写っている。この當たり前のものが當たり前に写るのが嬉しいのである。

ビューカメラ、といふ單語が廢れて久しいやうな氣もする。が、大型カメラといふよりはビューカメラの方が形態を表した單語として相應しいと思ふのでこちらの表現を使っている。ビューカメラもかなり面白いよ。