前囘の續きです。寫眞機とレンズは揃ったけど肝心のフィルムをセットできない状態です。そう、大型寫眞機は、フィルムを装填する場所が寫眞機に付いてないんです。
一般で使われる小型のカメラでは、金属の圓筒形の巻物(パトローネ)にロールフィルムが入ってますが、さすがに大型寫眞機では印面のデカさから、巻いてある状態だとバカでかすぎて「ロールフィルム」は不能。一枚一枚の「カットフィルム」を使います。
そのカットフィルム、裸で晒すと速攻で感光して眞っ白になってしまう爲、光を當てない暗室に入れておく必要があります。その爲の入れ物がこのカットフィルムホルダー。裏と表、二枚装填できるようになってます。
カットフィルムホルダーのメーカーは、主に三つ存在するようです。國産はサカイマシンツールのもののみ。
- サカイマシンツール TOYOカットフィルムホルダー
- Lisco Regal II 4×5 Double Sheet Film Holder
- FIDELITY Elite 4×5 Sheet Film Holder (既に生産中止ださうで)
これ以外にもあるのでせうが、事實上二擇。無論私はサカイマシンツールのものを選擇する事にしました。が、これ人気があるらしく、中古が無い。致し方なく、新品を購入することにしました。新宿西口本店のヨドバシカメラに大量在庫があったので、そこから5枚ほど。通常は一箱二枚組で賣ってるのですが、ここでは1枚單位で賣ってます。素晴らしい。フィルムは一箱十枚なので、ホルダーが5枚あれば裏・表で10枚丁度。
これと一緒に4×5のフィルムも購入してきました。35mm判、中判と比較しても、その異様なるデカさには頼もしさを感じます。いや、デカすぎ。
そりゃぁまあ、ここまでデカければ、粒子など肉眼で判別出來ようもなく、35mmやブローニー規格の小型センサー内で高畫素競争に喘ぐデジカメが追いつけるはずも無いでせうなぁ。
常々思ふのですが、人類はデジカメなんぞ發明される遙か百数十年前からこの技術を持っていたわけで、電氣を使わずとも感光して映像を残すことが出来るといふのは、電気の力で無理矢理電子畫像を演算しているデジカメと比較しても遙かにハイテクではないかと。電氣が無くても見られるし、保存性も百年以上の實績あり。何よりも誰にでも理解できる單純な形で眞贋性が担保できる。
たかだか20年前のビンテージマイコンのデータ管理(カセットテープやフロッピーディスク)や周辺機器管理で四苦八苦している私からすれば、夢のような「ハイテク」でございます事よ。
パソコンが絡めば何でも先進的、といふのはあまりに短絡。IT技術者にあるまじき發言なのかもしれませんが、これは僞らざる直感でございます。コンピューターの媒体は数年からせいぜい数十年程度しか持ちません。しかもエラーで欠落します。データが完全でも今度は再生環境が揃わない事もまま有ります。PC-88時代に流行したダ・ビンチ形式、PC-98時代に一世を風靡したMAG形式や、SC-55を前提としたMIDIファイルなど、正常に再生できる環境が今どれだけ現存していることか(T-T)。寫眞はそんな不安定なもので残すべきではない、いや電子ファイルは寫眞ですらない、といふのが私の持論でございます。これについてはまた稿を改めて。
さてフィルムの装填は完全暗室で行ふ必要があるのですが、そんな場所無いので、ダークバッグといふ、眞っ黒な袋にフィルムとカットホルダーを入れて、手探りで行う必要があります。ヨドバシカメラで見たところ、メーカーは三つ。
ここは國産で、汗でべとつかないやつがいいな、といふことで、説明書きを色々讀んで、定番らしきLPLのチェンジバッグの、一番大きなサイズにしました。三つの中で一番高かったんですが、こんなもんそうそう買い換えんだらう、と、ちと奮發。無論國産でございます。MADE IN JAPAN。
寫眞機、レンズ、フィルム、ホルダー、チェンジバッグ、今のところ全てどれも國産で揃えられました。美しい。
實際にチェンジバッグ内でフィルム装填作業を行ってみると、意外に簡單。ポイントは、チェンジバッグは必ず一番大きなサイズで、といふことでせうか。袋の中では(1)空のホルダー群、(2)フィルムの箱、(3)装填濟みのホルダー群、と場所をとるので、それ相當の領域が必要になってきます。これ注意です。
フジフイルムからは「クイックロード」といふ、既に一枚ずつ袋に詰めてあるものも賣ってるんですが、これが高價。1.5倍ほどの價格。ただでさえ一枚当たりの價格が高いのでこれは特殊用途として、通常利用は避けたいところです。勿軆ない〜
慣れると意外にも簡單至極なので、これは一度やってみるべきです。無論、装填の詳細やコツは色々とあるので、参考書籍を見ながら行う必要があります。参考書籍は次の囘で採り上げましたのでそちらを參照下さい。
さてようやく最低限、寫眞撮影ができるまで機材が揃いました。あとは・・・つゞく。